MHA

◆相澤消太
巡るジャイロスコープ(長編/完結済み)
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  • 01.導いて引力

     冷たく切りつけるような冬の朝の空気がわたしの吐く息を白く染めている。雄英高校、それがわたしの職場。超人社会と呼ばれるこの時代においては、知らない人はいないはず。それくらい有名な学校で、ありがたいことぶ学校事務として働いている。UAを象った…

  • 02.君はブラックホール

     忘年会が終わり、年末年始休みに突入したと思ったら、お休みは転げるように終わってあっという間に仕事が始まった。休みというのはなぜこんなに一瞬で過ぎてしまうのだろうか。おそらく社会人の全員が抱えているであろう疑問を己の中で自問し、ため息をつい…

  • 03.冬の大三角形が見てる

     マイクから飲み会のお誘い連絡がきたのは1月の中旬で、誘われたのは一月最終週の金曜日だった。場所は雄英高校近くの路地裏にある居酒屋『三猿』。雄英関係者はよくここで飲んでいて、わたしも何度か利用したことがある。 雄英の元教師が開いた店で、外観…

  • 04.アンタレスに惹かれる

     スマホの連絡帳を開いて、「相澤消太」の名前と電話番号をじっと見つめる。そこには固有名詞と数字の羅列があるだけなのに、わたしの胸がキュッと締め付けられる。この電話番号を押せば、相澤先生に電話をかけることができて、声を聞くことができる。そう考…

  • 05.今宵月明かりの下で

     昼休みが終わると早速わたしは施設管理部門の人に猫の話をした。するとすぐに雄英バリアーの点検が始まった。そこからは施設管理部門の仕事のため、わたしは自分の仕事に戻る。あとから聞いたところによると、雄英バリアーに異常はなく、とある職員が旅行に…

  • 06.抱きしめてレグルス

     地学の授業で使うため理科準備室に用意したジャイロスコープを眺めていると、わたしと相澤先生の関係はまるでジャイロスコープのようだと思った。決して交わらず、それぞれの軌道で回転を続ける。わたしは交じりたいと願って回転し続けているけど、それは構…

  • 07.彗星が瞬くみたいに

    この先、軽度ですが不審者に襲われる描写があります。苦手な方はご注意願います。 じわじわと帰る時間が遅くなり始めている2月の中旬。期末テストもあれば卒業式も控えていて、更には入学試験、入学手続き、入学式、新学期準備と、やることが目白押しだ。や…

  • 08.サイレント・ユニバース

     冬だというのに、繋いだてのひらにじんわりと汗が滲む。ちょっと気恥ずかしいけど、絶対にこの手を離したくなかった。相澤先生と手を繋いでいる、そう考えるだけで胸が苦しくなるし、何より安心できる。昂っていた気持ちがどんどんと落ち着いていくのを感じ…

  • 09.加速膨張、そして溢れ出す

     土曜日には警察から連絡があり、事情聴取を受けた。あの時のことを思い出しながら話すのは少ししんどかったけど、男が捕まっていることと、男の供述と概ね相違がないことから、すんなりと終った。相澤先生は金曜日の別れ際、事情聴取も一緒に行こうかと言っ…

  • 10.星が集う

     マイクから衝撃の事実を知ったその日もいつも通り相澤先生と帰った。けれど昼間に聞いたマイクからの話が気がつけば頭の中にちらついて、殆ど上の空みたいな返答をしていたと思う。そんな日が何日か続いて、ついに相澤先生に怪しまれてしまった。「なんかあ…

  • 11.観測者たちは騒がしい

    「カンパ〜〜〜〜イ!!」 というミッドナイトのテンションの高い乾杯の発声で3つのビアグラスが重なり、カチンと音がなる。わたしの前にミッドナイトとマイクが座り、気分的には取り調べを受ける感じだ。ミッドナイトはビールをそのまま飲み切ると、「で」…

  • 12.惑い、戸惑う、アンタレス

     全然気づかなかったけれど、相澤先生から少し前にメッセージが来ていたようだ。心臓の高鳴りを感じつつ、メッセージを開く。『お疲れ。ちゃんと帰ったか』 相澤先生が心配してくれている。きゅっと、心臓がリボンを結んだみたいに締め付けられた。さっきま…

  • 13.さようなら、引力

     翌日の土曜日、わたしは近所の自転車屋さんで自転車を買った。帰りはその自転車に乗って帰ったわけなんだけど、久々に漕いだ自転車は自分が思うよりもぐんぐんと進んで、風を切る感覚がなんだか楽しかった。 昨夜、わたしは悩みに悩んで、そして決心したの…

  • 14.観測者は考察する

     泣いた、とにかく泣いた。こんなに泣いたのはいつぶりだろうか、というくらい気がつけば涙が溢れて、浅い眠りを繰り返して朝を迎えると、目はパンパンに腫れていた。鏡に映った自分の別人のような顔を見た時に、思わず笑ってしまった。失恋をして泣くなんて…

  • 15.閑話 観測者とアンタレス

     マフラーに顔半分をすっぽりと隠し、気だるげに背中を丸めたイレイザーヘッドこと相澤がやってきた。居酒屋の前で待っていたプレゼント・マイクこと山田はニッと笑みを浮かべてそんな相澤を 片手を挙げて迎える。「ヨォ、イレイザー。休みんとこワリ…

  • 16.観測者たちは騒がしい2

     いつまでも続くと思われた冬の寒い気候も、徐々に和らぎを見せ始めた。もう少しすれば綺麗な桜が咲き誇り、ある者の門出を、ある者の始まりをそっと見守るのだろう。そんなことを思いながらも、年度末に向けて駆け足で進む日々を、ただただ慌ただしく過ごし…

  • 17.引力をなぞる

     最終的に地獄絵図となったマイクとミッドナイトとの飲み会から数日。4月に入り、学校内の桜のつぼみが膨らみ出して、いよいよ春の気配を感じさせる。風の匂いも、冬のツンとした匂いから、春の緑を感じさせるものへと変わった。新しい顔ぶれが生徒たちも、…

  • 18.キスインザムーンライン

     今日は満月で、月の明かりが夜を暖かく包んでいる。わたしは自転車を置いておくことにして、相澤先生と二人で夜の道を歩いている。相澤先生は何も喋らないし、わたしも何も喋らない。沈黙が非常に気まずい。どうして相澤先生は送っていくなんて言ったんだろ…

  • 19.春の大三角形が見てる

     ふわふわと空を飛んでいるような心地がずっと続いていた。気が付けばニヤニヤとしていて、何度も何度も先ほどの出来事を思い返していた。相澤先生は、わたしのことが好きだと言ってくれた。俺だけ見てろって言ってくれた。まさかの逆転ホームランに、わたし…

  • 20.木星を告げる雨

     家に帰ったわたしは、突如決まった初めてのデート(仮)のため、ここらへんの飲食店で評判がいいところを血眼で探していた。相澤先生は普段固形物を口にしないので、嫌いな食べ物はおろか好きな食べ物すらわからない。付き合いも浅いので仕方のないことだが…

  • 21.レグルスに着地

     シトシトと降り注ぐ春の雨を一身に受けながら、足元に泥水が跳ねるのもお構いなしにわたしたちは走っていた。 わたしたちが雨の中を走り抜ける足音ばかりが聞こえてくる。まさかラーメン食べたあとに走るとは思わなかった。なんだか面白くて、わたしは笑い…

  • 22.初夏の訪れと

     春はあっという間に過ぎ去って、気づけば初夏と言われる季節になっていた。新緑が眩しい今日このごろのトピックスと言えば、相澤先生は一クラス全員を除籍処分にしたなんていうこともあった。わたしは教師ではない、ただの学校事務だ。だから深くは聞かない…

  • 23.ふたご座が見えても

     わたしたちの住む街の駅を使って数駅行けば、商業ビルが立ち並ぶ大きな駅に辿り着く。わたしたちはそこで買い物をすることになった。 休日の電車内はそこまで混んでおらず、ありがたいことに隣同士で座ることができた。電車の中で隣同士座りながら、買い物…

  • 24.接近する

     二度目の相澤先生のお家。お邪魔します、というわたしの言葉に、相澤先生は、はい、いらっしゃい。と返す。何気ないやりとりだけど、相澤先生の律儀さを感じる瞬間でもある。 相澤先生の家は相変わらず小ざっぱりしていて、綺麗に片付いていた。リビングに…

  • 25.夏が来る前に

     相澤先生の顔がゆっくり近づいてきて、そしてキスが一度、二度、三度と角度を変えて降り注ぐ。わたしの思考がどんどんと溶けていき、ただただ相澤先生だけを感じて体が熱くなっていく。 そして相澤先生の手がわたしのブラウスのボタンに触れたその時だった…

  • 26.決戦の金曜日 前哨戦

     もう夕方だというのに、校舎を出た瞬間むせ返るような熱気がわたしたちの身体を包んだ。毎年思うが、夏ってこんなに暑いんだっけ? 8月になったらもっと暑いんだっけ? 暑さが過ぎ去るのはいつだっけ? そんなことを思う7月の中旬。 隣を歩く相澤先生…

  • 27.決戦の金曜日 準備運動

     校舎から出ると、競い合うような蝉とひぐらしの鳴き声と、賑やかに談笑しながら下校する生徒たちの声に包まれた。見上げた空はまだ明るくて、夏を感じる帰り道だ。 もうすぐ夏休みに突入するので、夏服の制服姿の生徒たちの姿や楽しそうな声がなくなってし…

  • 28.決戦の金曜日 アップ開始

     相澤先生がお風呂から上がるのを、ソファに座って今か今かと待ちわびる。先日ここでいい雰囲気になったが、腹の虫がそれを台無しにしたことは記憶に新しい。あのときのことを思い出して、色々と恥ずかしい気持ちになるが、同時にあの時の相澤先生の表情や、…

  • 29.決戦の金曜日 いざ決戦*

     それからわたしは相澤先生に抱っこされて、ベッドに丁寧に横たえられた。冷たいシーツがわたしを包み込む。寝室は初めて入ったけど、さすがに家では寝袋じゃなくてベッドで寝るんだな……なんて場違いなことを頭の隅で思ったりもした。 今からするであろう…

  • 30.アンタレスはかく語る

     隣ですやすやと寝息を立てる彼女の姿を見下ろして、相澤はわずかに口角を上げる。いつも一人で寝ているベッドに今日は二人が並んでいる。それはなんだか不思議な光景だった。シングルベッドに二人なんて狭くて仕方ないのに、悪くはないと言ったところだ。隣…

  • 31.ベガは眠らない

     意識が浮上する。重たい瞼を開けば、薄明るく見慣れない天井が見えた。寝返りを打つとカーテン越しに部屋に差す太陽の光に照らされながらこちらを向いて寝ている相澤先生の寝顔が見えるのに、加えて相澤先生の側にある手が緩い力で握られていることに気づい…

  • 32.夏の夜は星座を刻みつけて*

     冷たいベッドシーツに横たわったわたしの意識は相変わらずふわふわと宙に浮いているようで、覆い被さるように馬乗りになっている消太さんを見ていても、今日もかっこいいなあ。くらいにしか思わなかった。まさかこのあと、宣言通り“身体で教えられる”だな…

  • 33.その先へ、いつまでも

     一体いつまで夏は続くのだろうか。もしやこのまま永遠に暑いまま、夏は終わらないのではないか。容赦なく照りつける太陽に肌がじりじりと灼ける日々が続き、ふと心配に駆られたこともあったが、気がついた時には日が暮れるのが早くなっていて、吹き抜ける風…

  • 34.秋夜のしじまに耳澄ませる

     星と星との距離は、地球から見れば指でなぞれるくらいとても近いのに、本当はとても離れている。人の一生を何回繰り返しても辿りつかないくらい、途方もない距離だ。 消太さんとの距離を、少しずつ縮める日々。それは地球から見たら動いたかどうかなんて分…

  • 35.おねがい、お星様。*

     興奮は、伝播する。消太さんから発せられる発情は、わたしの耳から、唇から、皮膚から伝わってきて、わたしの内側をどんどんと熱くしていく。同じようにわたしの発情は消太さんへと伝わり、互いに興奮にあてられながら果てのないどこかへと上り詰めていく。…

  • 36.観測者たちと星は巡る

     通り抜けていった秋を惜しむ間も無く冬が来た。日毎早くなる日没は、太陽から寄り道しないで早く帰りなさいと言われているようだった。 あっという間に一年は終わりに向かい、忘年会シーズン到来だ。今年も間もなく終わりを迎える。去年の今頃は消太さんと…

  • ed.そしてジャイロスコープは巡り合う

     オールマイトが雄英の教師として赴任してくるらしい、という噂は、まだ公にはなっていないものの、職員の間ではほとんど確定に近い形で囁かれていた。 ―――そんなまさかね。でも万が一、いや億が一、雄英に赴任してきたら、死ぬ間際まで自慢しますよね。…

派生short story
相澤、嫉妬するどうか刻みつけてキスしないと出られない部屋巡る軌道は離れる

非固定夢主short story
相澤消太は愛妻家
続・相澤消太は愛妻家
体温で溶ける
予感はコーヒーの香りとともに
渇いて、潤して*
祭囃子、遅効性の毒
ノーブラに欲情する話*
街路樹の隙間、枯れ葉の絨毯さよならを言うにはあまりに眩くて初恋の行方に白雲がたゆたう(相澤→名前→ミッドナイトの話。最終回後)
メルティ・チョコレイト

◆飯田天哉
飯田君は幼馴染の前だとオスみが増すらしい