AOT_私の恋人紹介します。

 壁の外に何があるんだろう。ずっと、ずっと考えていた。果てのない地平が続いているのだろうか、わたしたちと同じように壁を作って生きている人類がいるのだろうか、なんて色々考えていた。アルミンが言うには、海と言うものがあるらしい。海は商人が取り切…

貴方のための夢を見る

『ねえ……今から君の腱を削ぐよ? 痛かったら左手を上げるんだよ?』 眼下でハンジさんが、悲しそうな、それでいて悦んでいるような、そんな表情で槍を掲げている。わたしは頷いて、喜んで足を差し出すのだった。そしてハンジさんは、うわあああああ!! …

想い煩う無自覚

 まただ……と、ハンジは起き抜けにため息をついた。今回で何度目だろうか。数えるのも馬鹿馬鹿しくなるくらいもう何度も起こってる。占いとかを信じるタチではないが、そういうものも一度調べてみようかと検討するくらいには追い込まれていた。 ぼさぼさの…

何気ない日常を君と

 ハンジが久々に風呂に入り、髪を乾かすのもそこそこに自室に戻ってきた。タオルを首にかけて、片手で大儀そうに髪を乾かしている。 既にお風呂を済ませていたは家主が戻ってきたのを認めると、読んでいた本から顔を上げて嬉しそうに顔を綻ばせ、おかえりな…

MY HERO

 調査兵である以上、壁外で人知れず巨人に食べられる、などということはとうの昔、それこそ入団を決めたその時に覚悟をしている。しかし、覚悟しているからと言って怖くないわけではない。 何度だって食べられかけたし、目の前で仲間を食べられたことだって…

キスキスキス

 震える手で執務室の扉をノックすると、中から「どうぞー」と緩い許可の声が聞こえてくる。意を決してノブに手をかけ、そして扉を開ける。「ししつれいします!! ・です!!」 若干どもりながらも挨拶をし、室内に入れば、ハンジさんはデスクに向かって書…

惚れ薬と嫌い薬

「嫌いになる薬を、既に嫌われている人に飲ませたらどうなると思う?」 ハンジの問いに、はうーんと思案し、やがて自分の考えを述べた。「マイナスとマイナスをかければプラスになるので、“好き”になったら面白いと思います」「なるほどね」 面白そうに口…

マーキングせよ

 とハンジは、お付き合いをしている。所謂恋人同士というものだ。つい最近に晴れて付き合えることになったのだった。嬉しくて嬉しくて、はかねてより相談をしていたニファに真っ先に報告したが、それ以外には何も言っていない。だから、とハンジ、そしてモブ…

そしてスパイスになる

 ばーんと派手な音を立ててわたしの部屋のドアが何の前触れもなく開け放たれた。こんなことをする人はひとりしかいない。わたしはベットからちょうど立ち上がったところだった。「ー!! 聞いてよ!! ついにエルヴィンの許可が下りたんだ!!」 扉を開け…

星と上着と嫉妬

 星が綺麗な夜だった。自室の窓ガラス越しにぼうっと夜空を眺めていたのだが、ガラス越しではなく、そのままの夜空を見たいと思って、ふらっと兵舎の外へと出た。外は思ったより寒くて上着を着てこなかったことを少し後悔するが、戻るほどではなかったのでそ…

You Makes Me

 巨人を生け捕りし生態調査を行うことについて、よく思わないものは少なからずいる。大多数は内地の貴族たちだ。彼らは壁の中に巨人を入れることを恐れる。 調査兵団とて組織である以上、上の決定に逆らうようなことはできない。そして組織の一員である以上…

宵に溶けゆく

 明日は二人とも調整日。こんなに嬉しい日はなかなかない。特にハンジさんは忙しい人だから、休みは貴重な上、その貴重な休みですら返上して大好きな研究に明け暮れてしまうような人だ。休みの日くらい休んでほしいと恋人としては思うのだが、ハンジさんは好…