MHA_巡るジャイロスコープ

13.さようなら、引力

 翌日の土曜日、わたしは近所の自転車屋さんで自転車を買った。帰りはその自転車に乗って帰ったわけなんだけど、久々に漕いだ自転車は自分が思うよりもぐんぐんと進んで、風を切る感覚がなんだか楽しかった。 昨夜、わたしは悩みに悩んで、そして決心したの…

12.惑い、戸惑う、アンタレス

 全然気づかなかったけれど、相澤先生から少し前にメッセージが来ていたようだ。心臓の高鳴りを感じつつ、メッセージを開く。『お疲れ。ちゃんと帰ったか』 相澤先生が心配してくれている。きゅっと、心臓がリボンを結んだみたいに締め付けられた。さっきま…

11.観測者たちは騒がしい

「カンパ〜〜〜〜イ!!」 というミッドナイトのテンションの高い乾杯の発声で3つのビアグラスが重なり、カチンと音がなる。わたしの前にミッドナイトとマイクが座り、気分的には取り調べを受ける感じだ。ミッドナイトはビールをそのまま飲み切ると、「で」…

10.星が集う

 マイクから衝撃の事実を知ったその日もいつも通り相澤先生と帰った。けれど昼間に聞いたマイクからの話が気がつけば頭の中にちらついて、殆ど上の空みたいな返答をしていたと思う。そんな日が何日か続いて、ついに相澤先生に怪しまれてしまった。「なんかあ…

09.加速膨張、そして溢れ出す

 土曜日には警察から連絡があり、事情聴取を受けた。あの時のことを思い出しながら話すのは少ししんどかったけど、男が捕まっていることと、男の供述と概ね相違がないことから、すんなりと終った。相澤先生は金曜日の別れ際、事情聴取も一緒に行こうかと言っ…

08.サイレント・ユニバース

 冬だというのに、繋いだてのひらにじんわりと汗が滲む。ちょっと気恥ずかしいけど、絶対にこの手を離したくなかった。相澤先生と手を繋いでいる、そう考えるだけで胸が苦しくなるし、何より安心できる。昂っていた気持ちがどんどんと落ち着いていくのを感じ…

07.彗星が瞬くみたいに

この先、軽度ですが不審者に襲われる描写があります。苦手な方はご注意願います。 じわじわと帰る時間が遅くなり始めている2月の中旬。期末テストもあれば卒業式も控えていて、更には入学試験、入学手続き、入学式、新学期準備と、やることが目白押しだ。や…

06.抱きしめてレグルス

 地学の授業で使うため理科準備室に用意したジャイロスコープを眺めていると、わたしと相澤先生の関係はまるでジャイロスコープのようだと思った。決して交わらず、それぞれの軌道で回転を続ける。わたしは交じりたいと願って回転し続けているけど、それは構…

05.今宵月明かりの下で

 昼休みが終わると早速わたしは施設管理部門の人に猫の話をした。するとすぐに雄英バリアーの点検が始まった。そこからは施設管理部門の仕事のため、わたしは自分の仕事に戻る。あとから聞いたところによると、雄英バリアーに異常はなく、とある職員が旅行に…

04.アンタレスに惹かれる

 スマホの連絡帳を開いて、「相澤消太」の名前と電話番号をじっと見つめる。そこには固有名詞と数字の羅列があるだけなのに、わたしの胸がキュッと締め付けられる。この電話番号を押せば、相澤先生に電話をかけることができて、声を聞くことができる。そう考…

03.冬の大三角形が見てる

 マイクから飲み会のお誘い連絡がきたのは1月の中旬で、誘われたのは一月最終週の金曜日だった。場所は雄英高校近くの路地裏にある居酒屋『三猿』。雄英関係者はよくここで飲んでいて、わたしも何度か利用したことがある。 雄英の元教師が開いた店で、外観…

02.君はブラックホール

 忘年会が終わり、年末年始休みに突入したと思ったら、お休みは転げるように終わってあっという間に仕事が始まった。休みというのはなぜこんなに一瞬で過ぎてしまうのだろうか。おそらく社会人の全員が抱えているであろう疑問を己の中で自問し、ため息をつい…