jojo_長編3部

08.ドーナツ・ホール

 夜の闇の中、DIOは艶やかなその上体を惜しげもなく月明かりにさらしている。少し毛先が濡れているのは、シャワーを浴びたからだろう。の周りで唯一、の過去を知るものだ。はしゃんと背筋を伸ばし、あのですね、と恐る恐る話し出す。「ひとつ、思い出した…

07.一歩ずつ前へ

 そこからのの記憶は曖昧になるが、DIOに横抱きされてカイロタワーを後にし、気が付いた時にはDIOの館のバルコニーにてDIOの膝枕で横になり、夜風に当たっていた。バルコニーは植物園も兼ねていて、日中は美しい花や観葉植物が彩る美しい場所だが、…

06.空白を埋める

 今日の仕事はDIOと共に出かけること。そう言う訳で、与えられたドレスに着替えてカイロの街をDIOとともに歩いていた。普段よりも肌の露出が多いため、なんだか気恥ずかしかったが、DIOが「似合うぞ」と言ってくれたのがとても嬉しかった。 エジプ…

05.貴方の腕の中

 眠りに就く前は、一緒に寝ていたなんて言っていたけれど、それこそどんな関係なのだろうか。一緒のベッドで寝るってつまり、恋人同士ではないのだろうか。それ以外で一緒に寝るのなんて、関係性がよく分からない。けれど、恋人同士の筈はないのだ。謎は深ま…

04.過去を重ねる

 大きく息を吸い、そして吐いた。一際豪華な装飾の扉は重々しく閉じていて、今からこの扉を開けると思うと気が重い。別に今からこの館の主に叱られるわけではない。ただ、話をするだけなのだ。なんだかそわそわして、緊張して、今すぐ逃げ出してしまいたいの…

03.失われた宝物

 DIOの館には老若男女問わずたくさんの人たちがやってくる。彼らは必ずDIOのことをDIO様と呼び、陶酔したような目でDIOを見る。確かにDIOにはそのような魅力がある。けれども彼らが何をしに来ていて、DIOとどういう関係なのかまではは知ら…

02.考察する

 それからは毎日リハビリに専念した。ずっと寝たきりだったので体中の筋力が低下していて、日常生活を送るのに支障をきたしている。最初は立ち上がることさえ困難であったし、腕ひとつ、指一本動かすのも難儀であった。 目覚める前までの記憶は相変わらず取…

01.百年

 ある日、無人のクルーザーが波間を漂っているのが発見された。あるのは飲みかけの三人分のコーヒーカップだけで、争った跡も、船の故障もなく、なぜいなくなったのか誰もわかる者はいなかった。 ただ一つ、変わっていたのは、アセチレンバーナーで焼き開け…