DQ5長編

16.面影

 翌朝、ラインハットに向けて旅立った。は再び幼いころの記憶が何となく蘇ってきて、なんとも懐かしい気持ちになる。自分の背丈くらいある草むらから出てきた、初めて出会ったスライム。なんとか戦ったが全く勝てそうになくて、「助けて」と叫びそうになった…

15.描く未来地図

 三人は少しずつ落ち着きを取り戻していき、は改めてパパスの手紙に目を落とす。それによると、天空のつるぎは伝説の勇者にしか装備ができないらしい。「装備ができないってどういうことなのかな?」 が首を傾げる。「、持ってみろよ」「うん」 ヘンリーに…

14.ここにいたこと

 暫く二人は川辺で座って居るとどんどんと夕日が暮れていった。完全に沈み切る前にがやってきての隣に座り込み、村を回っていて思い出したことを二人に伝えた。 ―――かつてこの村に滞留していた時に、父がこの村を流れる川の奥にある洞窟に何かを隠してい…

13.荒廃のサンタローズ

 オラクルベリーを出て次なる目的地、サンタローズに向かう前に不思議なおじいさんに出会った。彼はモンスターじいさんと言うらしい。モンスターじいさんはを見ると、には魔物すら改心させ、仲間にさせる不思議な魅力がある、と言った。彼の言うことはとても…

12.おやすみ

 サンタローズのこと、ラインハットのこと、この世界のこと。自分たちが奴隷として働いている間に起きた世界の出来事を埋めるため、酒場に顔を出してみれば、沢山の人でわいわいと賑わっていた。生まれて初めてやってきたこの酒場、と言う場所は独特の雰囲気…

11.オラクルベリーへ

 翌日、マリアはシスターから洗礼を受けた。ルビー色の綺麗な水を振りかけられ、この修道院の一員として認められた。その姿はそれはそれは綺麗で、三人は見惚れてしまった。 洗礼が終わり、シスターから祝福されているマリアを見ながら、三人も旅立ちの準備…

10.鐘の音が鳴る

「誘ったの、俺でよかったんですか?」「? どうしてですか……?」 目の前を歩いて施設を案内してくれているマリアさんに、俺は不躾を承知で問いかける。マリアさんは立ち止まり、振り返った。綺麗な金髪がその動きに合わせて揺れる。俺は不思議そうにして…

09.二人の行方

 食堂に戻ると、先程と同じ椅子にヘンリーは座り込んでいて、その目の前にはマリアがいる。マリアが最初に二人に気づいて「まあ」と声を上げれば、ヘンリーがくるりと振り返って二人の姿を認めた。「遅かった―――って! おはよう!!」「おはよう」 ヘン…

08.僕らの世界が終わる前に

 お腹が満たされるということはこんなにも幸せなのか。と、幸福感で満たされた頭の片隅でぼんやりと思った。満足な食事をさせてもらえず、しかも食事といえるほどたいそうなものではない、そんなものを食べていた日々を思い返し、再び夢のような今日にひたる…

07.憧れた今日

 ここは天国だろうか。あれだけ人のために働いて天国に行けないわけがない、なんていう考えが生前からあったものだからこれで天国じゃなかったらジャッジした人に文句をつけようと考えていた。 けれどここはきっと天国だと思った。なぜなら真っ白の天井に、…

06.美しき祈りよ

 どうやら遠くで騒ぎが起きているらしい。ざわざわと喧騒が聞こえてくるし、監視たちも落ち着きがない様子だった。おおかた、新しく入った奴隷が監視に反抗しているのだろう。自分たちにもそういう時期があったが、抗ったって無駄なことは次第に分かってきた…

05.無限の日々

 年月は人を変えるというが、彼ほどこの言葉が当てはまる人はいないだろう。「なんだ、おれの顔をじっと見て、どうした?」「……ううん、なんでもないよ」 ラインハット城の王子だったヘンリー。あのひねくれ王子を十年という月日が変えた。ひとつの大きな…