炎の神殿は物凄い暑さで、とてもじゃないが中で活動するには限界というものがあった。引き返してゴロンのリンクに相談すると、耐熱素材でできているゴロンの服をくれた。二人で同じものを着たので、いわゆるペアルックのような状態になり、ナマエは少し嬉しかった。リンクはナマエの姿を見ると、晴れ渡った夏空のような青い瞳をキラキラと輝かせる。
「おーナマエ! すっごい似合う!」
「え、そ、そう?」
「可愛い!!」
「あ、ありがと……」
外国人か、と思うくらいのストレートな表現は、子ども特有なものだろう。けれど見た目が大人だけにずるい。見た目が大人で頭脳が子供は時に物凄い武器だろう。これでちょっと照れながら結婚してなんて言われたら反射的にイエスしてしまいそうだ。時に素直、時に意地っ張りなリンクは本当にかわいい。
「よーし行こうか! ゴロン族を助けよう!」
「おー!」
幾分テンションの上がったリンクの言葉を皮切りに、炎の神殿へ歩き出した。
ゴロンの服の効果は抜群であった。先ほどは死んでしまいそうなほど暑かったはずなのに、暑さをそこまで感じない。炎の神殿に入ると、真ん中に大きな階段があり、その両脇に扉があった。まずは階段左の扉を開けてしばらく進むと、牢屋があり、そこにたくさんのゴロン族が震えて丸くなっていた。
「助けに来たよ!」
リンクが声を上げると、ゴロン族は一斉に顔を上げて二人のことを見た。
「ああ! お前、伝説のドドンゴバスター、勇者リンク!!」
「その、リンクです」
また得意げに鼻の下をこするリンク。
「そこにスイッチがあるから乗ってほしいゴロ!」
言わた通りナマエがスイッチの上に乗ると、牢屋の扉があいた。
「やったゴロー! ヴァルバジアに食べられないですんだゴロ!」
喜びを一身で表しているゴロン族たち。 ナマエはリンクの隣に戻って、ほほ笑みあった。
「反対の扉にもオラたちの仲間がいるゴロ。助けにいくゴロ!」
「ダルニアはどこにいるの?」
リンクが問えば、ゴロンたちはそれまでの喜びを引っ込めてひとたび焦燥に駆られた表情になった。
「ダルニアの兄貴は……ヴァルバジアを倒しにいったゴロ。ヴァルバジアは階段を上った先の扉をいったところにいるゴロ。お願いだ、リンク。ダルニアの兄貴を助けてほしいゴロ!!」
ゴロンたちの縋るような思いに応えるようにリンクは深く頷いた。ナマエはそんな様子を見て、おずおずとリンクの名を呼んだ。
「わたし……ゴロンたちと戻ろうか? 足手まといだよね」
「何言ってるんだよナマエ。遠くにいるほうが心配でいやだよ」
そうこうやり取りをしている間に、ゴロンたちはみんな出て行って反対側で囚われているままのゴロンたちを助けに向かっていた。あっという間に二人きりになる。
「俺の手の届くところにいなきゃ、守れない!」
真摯な表情にナマエの心は揺れた。ついていけるものならついていきたい。けれど、敵がナマエという弱点に気づいたら? 何かを守りながら戦うというのはとても大変なこと。それにもしもリンクの前で命を落とすようなことがあったら、彼に一生の傷を作ってしまうのではないか。しかしそんなナマエの胸に、ふと言葉が蘇った。
『守るべき存在は、騎士を強くさせる』
シークの言葉だった。まるでそれが伝わったかのように、リンクが言葉を重ねた。
「俺を信じて。絶対ナマエのこと守って、絶対どんなやつにも勝つから」
にっと太陽のように笑った。そしてナマエはこの笑顔にめっぽう弱いわけで、込み上げてくる感情をそのままに、顔を綻ばせる。
「……うんっ!」
そして大きくうなづいた。
「よし、ダルニアを助けに行こう!」
