The Moon Longed For The Sun.

The Moon Longed For The Sun.
(ジョナサン&ディオ連載|ジョナサンのことが好きなメイドと、それが気に食わなく我がものにしようとするディオのゆがんだ恋のお話)完結済

  • 01.太陽に焦がれる

     ジョナサン・ジョースターさまというのはわたしの仕えているおうちのご子息様でして、とっても勇気あふれるお方で、素敵な男性なんです。年も近いことから、恐れ多くも仲良くさせてもらっていて、友達とはまた違うのですが、それに似た感覚で接してもらって…

  • 02.気づかれた気持ち

     その日のディオさま歓迎パーティは滞りなく終了しました。 ディオさまは人当たりがよく、よく気が利くのでわたしたち使用人は一様に嬉しがりました。正直みんな、ディオさまがどんな人か心配でした。気難しい人でしたらどうしよう、と。ジョースターさまも…

  • 03.月との秘め事

    「おはよう」「おはようございます、ジョナサンさま」 朝廊下ですれ違いざまに、ジョナサンさまに挨拶をされました。わたしは立ち止まり、頭を下げて挨拶をします。頭を上げると、ジョナサンさまの後ろからディオさまがやってきていました。昨日の出来事が思…

  • 04.ひまわりの恋

     ディオがやってきてから、ぼくの生活は一変した。それまで自分の暮らしが、特別とても幸せだ! と感じる機会はなかったが(勿論、恵まれているとは思っているよ)、失ってから気づくものというのがあるらしい。それまでのぼくの暮らしは、明らかに幸せであ…

  • 05.曇りのち晴れ予報

    「ただいま」 花壇にしゃがみ込んでお庭の手入れをしていましたら、ディオさまの声が頭上から聞こえてきました。顔を上げればやっぱりディオさまで、ジョナサンさまはいらっしゃらないようです。 わたしは立ち上がって、頭を下げます。「おかえりなさいませ…

  • 06.まだ芽は出ず

     そういうわけで、わたしは今、ディオさまと一緒に街へ出ています。街にやってきたのなんていつ振りでしょうか。まして誰かと一緒に来るなんて、初めてに等しいです。たまの休日に、一人でうろちょろするくらいですので、もちろんジョナサンさまとも来たこと…

  • 07.お花畑ワルツ

     ぼくはその言葉を聞いたとき、ひどく面食らった。だって吃驚したんだ。とディオが街へ行ったなんて。二人はそんなに親密な仲だったとは、ぼくは思いもよらなかった。なんというか、恥ずかしい限りだけれどと一番親しいのはぼくと思っていたから。そして、ぼ…

  • 08.午後のティータイム

     ああ、神様、慈愛の女神様。こんなわたしを許してくださいませ。 ジョナサンさまがこの上なく好きです。ですが、ディオさまに何をお返ししようか考えるのが楽しいのです。決して、ディオさま好きなわけではないですが、わくわくしてしまうわたしをどうかお…

  • 09.交錯する思惑

     その日は唐突にやってきました。ジョナサンさまがボロボロになって帰ってきたのです。心の奥底がざわつきました。なぜジョナサンさまがこんなひどい目に……? ジョナサンさまは、ジョースターさまには知らせないでほしい、とのことなので、ひとまずわたし…

  • 10.冷たい月と優しい太陽

     ジョナサンさまと距離があいてしまった気がしてから、わたしはそれはそれは気分の上がらない日々が続きました。あのことを話してくれない以外、ジョナサンさまとわたしの間は別段普通でした。会えば挨拶もするし、お話もします。けれどわたし自身が距離を感…

  • 11.再生と崩壊

     ディオさまの部屋から帰り、掃除を終えて束の間の休憩の時間。自室にいるとノックされました。はい、と返事をし扉を開けると、ジョナサンさまでした。まさかの来訪に、わたしは思わず息を呑みました。「」「ジョナサンさま。どうかなさいましたか?」「やっ…

  • 12.月を見るひまわり

    「これは驚いた」 突然の深夜の来訪者。誰かと思えばだった。なんだってそんなに暗い顔をしているのだろうか。「こんばんは……」 は暗い顔をそのままに挨拶をした。「どうしたんだ? まあ、とりあえず入って」 招き入れると、は暗い顔のまま俺の部屋へ入…

  • 13.月とひまわり

     ジョナサンさまを待っている間、手持ち無沙汰なわたしたちはジョースター邸のお庭にあるベンチに座って会話をぽつぽつと交わしました。「、君はいつからジョジョのことが好きなんだ?」「うーん、いつからでしょう。気が付いたときには……」 一応記憶をた…

  • 14.始まりだした終わり

    「ぼくは部屋に戻っている。じゃあな」 ディオさまが配慮して帰ってくださいました。わたしは頷いて、立ち上がります。 ジョナサンさまはまだわたしたちに気付いていません。駆け寄ると、ジョナサンさまはわたしに気付いて、大きく手を振ってくださいました…

  • 15.ひまわりの苦悩

     さまざまな、本当にさまざまな感情が昨日のわたしの中にありました。それをひとつひとつ思い出そうとすると、心がずきりと、真新しい傷のように、痛みます。 ジョナサンさまに、好きな方ができました。あの時はそう、鈍器で思いっきり殴られたような衝撃で…

  • 16.しあわせの裏の

     仕事をしていてもジョナサンさまのことばかりを考えてしまいます。いってしまえばディオさまの言っていたことなんてわたしにとってはジョナサンさまの次なのです。どうでもいいわけではないのですが、二番目なんです。ですので先ほど言われた言葉の咀嚼なん…

  • 17.ひまわりは月を見るか

     ジョナサンさまとも、ディオさまとも(一方的に)気まずいまま一日が過ぎました。その日の夜、眠りにつく前にわたしは慈愛の女神様にこう誓いました。明日こそは、何事もなかったかのように、いつものに戻ります、と。 それにしても今日は本当はジョナサン…

  • 18.さようなら親愛なる

    「ディィィィイイィィィオオオオォォォオオオオォオォオオ!!!!!!」 ジョナサンさまが怒りのままディオさまの獣の咆哮かのように名を呼び、ディオさまに殴りかかっています。「君が!! 泣くまで!! 殴るのをやめない!!」 ジョナサンさまがディオ…

  • 19.振り向かないよ

     わたしたちの取り巻く環境は、ディオさまがやってきてから瞬く間に姿を変えていきました。 ジョナサンさまの紳士の修行が厳しくなり、ジョナサンさまが恋をし、わたしが事実上失恋をし、ダニーが亡くなり、そして―――ジョナサンさまが失恋なさいました。…

  • 20.七年経っても太陽は昇る

    「切り裂きジャックですよね、気を付けます」「ああ、そうだ。くれぐれも気を付けるんだよ」「はい、わかってます」 は心配そうに眉毛を下げる執事長に対して、にこっと微笑み頷いてみせた。 切り裂きジャック――ロンドンの街で、夜な夜な人目のつかないよ…

  • 21.過去を思う

     市街地を駆けずり回って探すが、なかなかは見つからなかった。のよくいく店を一店一店見て回ったのだが、そのどこにもいなかった。時間が経過するにつれて焦りと不安が増えていく。不意によぎる最悪な結末を無理やり追い払う。(、どこにいるんだ……?) …

  • 22.恐ろしい考え

     ジョナサンとだけが知る秘密。それは、このジョースター邸にある“石仮面”の秘密。「考古学が金になるのかい? とディオに言われたことがある。彼らしい一言だ」 ジョナサンの部屋で二人は机に向かって座っていて、机上にある石仮面をじっと見つめたまま…

  • 23.太陽と月について

     ディオは一体何を考えているのだろう。そしてジョナサンはロンドンへ何をしに行ったのだろう。先ほどから答えのない疑問を延々と繰り返し考えている。は先ほどの戸締りチェックの続きをして、自室に戻り一人で深く考え込んでいた。本当ならディオに直接聞き…

  • 23.嘘か真か

     それから数日が経ち、朝日が昇る前にジョナサンが帰還した。ねむっているときに自室をノックをされ、誰かと思ったらジョナサンで、寝ぼけ半分だったはすぐに覚醒した。ジョナサンは、金髪を無造作に伸ばし帽子を目深にかぶった男性と、小柄な東洋人の老人と…

  • 25.巡り巡る運命

     痛い沈黙がジョースター邸を包んだ。ジョナサンは警官から手錠を手渡してもらい、観念したように両手を差し出したディオを見据えた。誰もがジョナサンが手錠をかける瞬間を固唾をのんで見守っていた。「ジョジョ……人間ってのは能力に限界があるなあ」 何…

  • 26.血路を探せ!

    「あの父親の精神は、息子であるジョナサン・ジョースターが立派に引き継いでいる! それは彼の強い意志となり、誇りとなり、未来となるだろうぜ」 スピードワゴンがジョースター親子を見て言う。彼の瞳にもまた、涙がたまっていた。それから彼はディオが消…

  • 27.炎とともに散りぬ

     ディオは炎に焼かれたまま近くにあった椅子に手をかけると、あっという間に椅子まで燃え広がる。ジョナサンはスピードワゴンの首根っこを掴んで後ろへ吹き飛ばした。「逃げろスピードワゴン! きみは元々無関係な人間だ! を頼む!!」 ジョナサンは壁に…

  • 28.憂鬱な三日間

     それからスピードワゴンと協力し、瀕死状態のジョナサンを病院まで連れていき、ジョナサンは緊急入院をした。はジョナサンの付き添いを申し出たが、金髪の美しい看護師に、断られてしまった。生死の境をさまよっている人の看護を、素人がいても邪魔なだけな…

  • 29.月と館と結論

     次に目が覚めた時には、薄暗い部屋のベッドに横たわっていた。部屋にはベッドと鏡台があるくらいで、ほかに目ぼしいものはなかった。備え付けの燭台には火が付いているが、心もとない。扉はあけ放たれていて、扉の先も薄暗かった。なぜこんなところにいるの…

  • 30.吸血鬼の思惑と

    (なんて、勢いに任せていろいろ言っちゃった……こわい。どうしましょう。もうディオさまに顔を合わせられないです……。でもこの館にいる以上、それは無理だし、仕えるしかないのかな……でもジョナサンさまが心配です、会いたいです。逃げられるかな……で…

  • 31.ひまわりを臨む月

     やることのないこの邸で、ただただ“その時”を待つ、と言うのは時間の経過がいつもの何十倍も遅く感じる。本当に彼はやってくるのだろうか、それともあれは冗談だったのだろうか。そわそわとして仕方ないので、城にある本を何冊か頂戴して、蝋燭の明かりで…

  • 32.1%

     眼下には余裕一切なしの表情のがおれを見ている。「ディオ様……?」「そうだ、そうやっておれのことを意識しろ」 ジョナサン>ディオの式は一生覆ることはないだろう。けれどもおれだって諦めたってわけじゃあない。おれはいつだってナンバーワンを目指す…

  • 33.ベクトルの行方

     は何もすることのないこの古城の中で、読書をしたり、脱出計画を立てたりしていた。ディオもどこかへ出かけていたので脱出には絶好のチャンスなのだが、やはり勇気が出ないので、いつも計画だけで終わる。 ディオが人類支配なんて企まず、ここで大人しく隠…

  • 34.月に愛された男と

     込み上げる不思議な気持ちはさておき、身体を洗って着替えなくてはならないことを思い出し、は着替えをもち、今度はまっすぐバスルームまで向かった。もうあの声は聞こえてこなかった。 熱いお湯で身体を洗いながらも、頭の中で反響を繰り返す女性の嬌声。…

  • 35.太陽に焦がれる

     かねてより進めている人体実験。死者のゾンビとしての蘇生は成功した。タルカスとブラフォードだけでなく、この地に亡くなった人間たちを次々と生き返らせて、戦力として蓄えている。そしてその後に実施した実験で、ゾンビ化したもの同士のパーツの交換も可…

  • 36.月が眠り太陽が昇り向日葵は

    「貴様……ジョジョ、お前が生きているということは、あの二人の騎士を倒してきたということか……」 城の上に上り詰めてきたジョナサンを認め、ディオは感慨深げに言う。タルカスとブラフォード、彼らを倒すとは、ジョナサンは想定通り力をつけてやってきた…

  • 37.太陽と月がひとつになる時

    「ジョナサンさまは、確かにさんを愛していたと思います。それにジョナサンさまは気づきませんでした。彼にそう言われたわけではありませんが、確かに、愛していたんです。あの人にとってさんは、妹であり、家族であり、共に生きたいと願う人であったと思うの…

第三部 SWEET EMOTION に続きます。