#01

「キミは旅人か? 見たところとてもその、若そうだが」

 と、問うた。言葉を選んでいるが、暗に子どもがこんなところでどうしたのだと心配しているようだ。この男を驚かせてやりたい気持ちが湧き出てきて、ナマエは首を横に振る。

「いいえ。期限付きですが、鍛冶師のロスーリ様に師事しています」

 案の定男はとても驚いた顔をして、ナマエは内心でほくそ笑む。

「そうだったのか! それは知らなかったゾ。なるほど、今に至るまでの話が色々と繋がった。点と点が線になった気分だゾ」
「そうですよね。突然夜光石がどうとか槍がどうとか言われたらびっくりしますよね。すみません。まだひと月ほどなので、知らなくて当然だと思います」
「その……なんというか、ロスーリではなくて、もし他のゾーラのものから失礼があったらいつでもオレに言うんだゾ」

 ロスーリは老齢なゾーラ族で、明らかにそのロスーリよりも若そうなこの男が師匠のことを呼び捨てにしていることが多少気になりつつも、その言葉の真意の方を探る。

「あの……ハイリア人のわたしに、ということでしょうか」

 マルートからもそれとなく聞いていた。ナマエの言葉に、男は「既に知っていたか」と苦い顔をして話し始める。

「昔に色々あってな、老齢のゾーラ族は、ハイリア人というだけで冷たい言葉を浴びせるかもしれない。だが、全く気にしなくていいからなッ!」
「わかりました。お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。気にしないですから」

 全く気にならないと言えば嘘になる。現に今日に至るまでにも、冷たい言葉はなくとも、冷たい視線を感じたことは幾度もある。けれどゾーラ族のみんながそういうわけではないと分かっているから、ナマエはそんな視線にもへこたれず頑張ることができる。

「キミは強いんだな。……では、キミの作る武器、楽しみにしているゾ!」

 ぽん、と大きな手がナマエの肩に置かれて、男は再び笑ってみせた。その笑顔は、音が鳴るわけがないのにキランと輝くような音が聞こえた気がした。

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ウオトリー訛りの子が書きたいという軽率な気持ちが具現化したものです。タウロさんがいけないんです。続きます。