(されても構わなかったのに)/早乙女乱馬
はじめて人を好きになった。 そう自覚したのはつい最近で、気付いた瞬間俺はそいつと普段通りに接するのが難しくなった。同じ屋根の下に住む上でそれはとても面倒くさくて、ときどき自分でむしゃくしゃするが、だからといって好きだと自覚する前に戻れるわ…
短編
愛せばいいのに/天道あかね
あたしは女で、も女。その事実は一生変わらないけれど、でも、水をかぶれば途端に男になってしまうは、女ということは事実だけど、男にもなるということも事実。この二つの事実が、いつもあたしを悩ませる。「恋でもしてるの?」 あたしのベッドに寝そべっ…
短編
好きだなんて言えないよ/天道あかね
「ただいまー! もう、突然雨に降られてやんなっちゃうね」 水をかぶって男になってしまったの低い声が、ガラガラと天道家の玄関の引き戸を開けた音と同時に居間まで聞こえてきた。先に帰って居間でくつろいでいたあかねだが、の声を聞いて、胸が締め付けら…
短編
好きだよ、と彼女は笑った。
は俺の気持ちなんてちっとも気づいてなんだろう。だってはいつだって、ホークアイを見ている。いつから俺がを好きになったかなんて、もう思い出せないし、昔に戻れたとしても、きっと分からないだろう。気付いたら好きになっていたんだ。「デュラン、どうし…
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待ちくたびれたなんて言わないで
サルタンは今日も暑い。「おはようちゃん」「おはよう」 今日もいつもと同じ毎日。朝起きて、仕事をして、帰ってきて、おやすみ。夜になるとたまにやってきた義賊の彼は、今はもう現れない。彼は追われる身で、既にこの砂漠からは姿を消しているから。 彼…
短編
本当に嬉しそうに笑いますよね
午後の優しい光が降り注ぐ家の中で、とアレクサンドルは先日エメロードからもらったバームクーヘンをダイニングテーブル越しに向かい合って食べていた。他愛ない話をしながらバームクーヘンを食べていて、ふとの頭に中にずっと不思議に思ってた疑問が首をも…
短編
ああまたそんなに散らかして
「ああ、でもあれは確かあれに書いてあったはず」「いやまてよ、でもあれはああいうことなのか……?」 ぶつぶつと独り言を言いながら、ありとあらゆる本を取り出して読んではああでもない、こうでもない。とそこにおいて、また新しい本を読んで、またぶつぶ…
短編
そんなことで拗ねないでくださいよ
「あらら?」 これは、あそこの魔法学園の生徒がよく携えている教科書だった。屈みこんで拾い上げ、中身をパラパラと流し見してみると、やはりそこには想像したとおり魔法を使った絵だったり、唱え方だったりが載っていた。しかし、宝石店の目の前にこんなも…
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おかえりなさい
『いっそ世界が終わればいい。』バッドエンド的なストーリー あなたのいない世界なんて、わたしにとっては意味のないものなんです。あなたのいない世界なんて、あなたのいない未来なんて、わたしはいらない。だから、ずっと一緒にいてください。「どこにも行…
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君をさらってしまおうか
※『いっそ世界が終わればいい』の39話のアレクサンドルサイド的なお話です。 もう時間がない。今こそ蛍姫様を救う時なんだ。あと必要な核は二つ……。実行するにあたって、“アレックス”の記憶を周りから消す必要があった。そこで問題があった。さんの存…
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君の手で葬って
「アレク……」 懐かしい面影が、私の頭に蘇る。真面目で、不器用で、でも一途なアレクサンドル。最後にあなたを見たのは、いつだろう。仏頂面で蛍姫様に仕えていたあの頃がとても懐かしい。「いまは宝石泥棒サンドラとして、珠魅の核を根こそぎ奪っているよ…
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Happy Birthday
「さん、さん」「はい? なんですか!」 飼い主に名前を呼ばれて駆け寄る忠犬のごとく、ひょこひょことアレックスのもとへ駆け寄る。「少し、目をつぶってもらえますか?」「はい。こう……ですか?」 言われたとおり目を瞑り、首をかしげると、上出来です…
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