短編

惑いと共存する想い

  私が好きなのはアリーナ様。私が好きなのはアリーナ様。私が好きなの………は? ―――姫様に、決まってますよね。「クリフト、なんだか深刻そうな顔をしてますね」 宿屋のロビーで、一人何をするわけでなく水を飲みながら、ぼうっと思案に耽っていたと…

僕と彼女の一定距離

  私と彼女の間には、一定の距離がある。それは縮まる事もなく、広がる事もない。極めて一定の距離。同じ相手を尊敬し、愛すると言う、一定の距離。「今日も姫様はかっこいいですね……」 魔物を己の拳でなぎ倒したアリーナの勇姿を見て、うっとりと呟いた…

#03

 にはこのゾーラの里に修行に来るにあたって、成し遂げたいことがある。父から修行に行くからには、きちんと目的意識を持って行きなさいと言われて、確かにそうだと思い、やりたいことリストを作ったのだ。 一つ目は学んだことを通じて、新しい武器を作るこ…

#01

「キミは旅人か? 見たところとてもその、若そうだが」 と、問うた。言葉を選んでいるが、暗に子どもがこんなところでどうしたのだと心配しているようだ。この男を驚かせてやりたい気持ちが湧き出てきて、は首を横に振る。「いいえ。期限付きですが、鍛冶師…

絶望を歩く

「まさか……が賢者だったなんて」「わたしもびっくりだよ」 賢者の間で俺たちは再会を果たした。ずっと一緒に旅をしてきたが賢者だって気づいたときは本当にびっくりしたし、賢者になんてなってほしくなかった。だって、賢者ってよく分からないけど、サリア…

あしたも大好き

「、みてみて! 流れ星ッ! ああ、ダメだ消えちゃった……」 リンクが急に嬉しそうに夜空を指さしたと思ったら、すぐにしゅんと落ち込んだ。わたしはと言うと、そんなリンクをずっと見ていたので、リンクが指差した流れ星を見ることはできなかった。ハイラ…

時の狭間レディ

 迷い込んだのは不思議な町、クロックタウン。何が不思議かって、なんと、同じ三日間をずっと繰り返しているのだ。そのことに気づいているのはリンクと、妖精のチャット。時のループから切り放たれたリンクは、三日間を何度も繰り返しながらこの世界を終焉か…

置いてけぼりの大人

 わたしの居場所がなくなってしまったのは、もう何年も前のこと。それはそれは怖かったし、それはそれは不安だったけれど、ずうっと一緒にいた人がいるから全然へっちゃらだった。それには自分がある程度年を取っていたこともあるだろう。まだ小さいあなたに…

そのDNA、仗助に会う

 東方仗助―――血縁上、空条承太郎の叔父にあたる男子高校生だ。彼に会うためにここ杜王町までやってきたわけだが、はホテルに閉じ込められていた。殺人鬼アンジェロはもういないらしいが、なんでも、危ないスタンド使いがいるとかなんとからしい。にはスタ…

そのDNAは続いていく

 ジョセフの隠し子がいた、そんな話題で今ジョースター家は大波乱を迎えている。生涯愛するのはスージーQただ一人、そう言っていたジョセフの言葉はもはや何の意味も持たないものになった。 空条承太郎28歳、M県S市杜王町に、ジョセフの隠し子であり、…

そのDNA

「承太郎様、おかりなさいませ」「その呼び方をやめろと言っているだろ」 そう言われましても。とは眉を下げて、言葉を続ける。「わたしはメイドでございますので」「それはジジィのジジィの時の話だろ」 玄関で自分を出迎えた自分よりも幾分も背の低いメイ…

ペット・ショップも甘えたい

 人には誰にも見られたくない姿はあるだろう。普段クールな人の甘えた姿、恋人にだけ見せる姿、家族にだけ見せる姿、勿論テレンスにだって人に見られたくない姿の一つや二つ、ある。聖人君主でもない限り、誰にだってあるのだ。そしてテレンスが察するに、ペ…