聖剣伝説LOM_いっそ世界が終わればいい

50.after that

 ずっと彼の背中を見て、追いかけていた。今眺めるのはその横顔。前でも後でもない、彼の隣が今の自分の立つ場所。こんなに近くにいることが許されるなんて、少し昔の自分は想像もしなかった。ただこれからも一緒に、同じ職場の人間としてでいいから、一緒に…

49. change the world

 いよいよ運命の日がやってきた。アレクサンドルとは今、煌めきの都市を遠く見つめていた。美しい宝石たちが幾重にも重なり合い都市を造り上げている様子がとても美しく、遠目からでも感嘆のため息をついてしまう。隣のアレクサンドルは緊張で押しつぶされて…

48. in the night

 何度も忠告したのに、良心からか、はたまた意地なのか、とにかく彼女は頑なに珠魅と関わった。彼女が珠魅とかかわれば不幸になるのは目に見えていたのに、しかし俺は全力で彼女を遠ざけようとはしなかった。 いっそ宝石箱に閉じ込めてしまおうか、と思った…

47.miss you

(とはいっても……) 探すあてなどないのが本当のところだ。アレックスとゆかりのある場所で、が思いつく場所などあの宝石店しかない。アレックスがどこに住んでいたのか、当時どんな人と交流があったのかなんて知らなかった。けれど一つでもあてがあるなら…

46.ありがとう

「おかえり瑠璃くん、早かったね」「ん、ただいま。紅茶冷めちゃったか?」「ちょっとね、でも許容範囲だよ」 どうぞ、といっては瑠璃に紅茶を差し出した。一口、口に含む。若干の冷たさが、先ほどまでの熱い気持ちがだんだんと平温にさせた。「ありがとう」…

45.こぼれおちる砂粒

 あれから、あの一件からしばらく経った。は今までと変わらない日々を送っていた。天気のいい日にはドミナにお出かけ、雨の日には家で読書。変わったといえば、ちょくちょく瑠璃や真珠が遊びに来ること。それから、カレンダーから宝石のマークが消えてしまっ…

44.物語の結末

 抱きしめたの身体が柔らかさと引き換えに固くなっていった。は石になってしまった。瑠璃の心がとても重くなる。悲しさが広がっていくようだった。けれどなぜだろうか、それとは反比例するように身体が軽くなってきた。痛みとかが一切消えてしまったようだっ…

43.宝石たちの夢のあと

 足がもつれながらもアレクサンドルのもとに駆けつけて抱き寄せる。「アレックスさん!」と呼びかければ、アレクサンドルは力ない笑顔を浮かべた。足先から徐々に消えていくのが見えて、はひどく焦燥する。どうしよう、大切で、誰よりも幸せになってほしい、…

42.進んだ道の末路

 レイリスの塔の運命の部屋で見たかつての煌めきの都市。あのときは煌めきの都市の内観を見たが、今回は外観を見ている。王杓の目指すほうへ向かうとそこには、荒廃してなお美しい煌めきの都市が眠るように聳えていた。「ここが……煌めきの都市」 隣で瑠璃…

41.閉ざされた世界

「、どうしたんだ」 宝石店に入った瞬間立ち止まり、何も言わず佇むを不審に思った瑠璃と真珠が中へ入ってきた。「ねえ、わたし、ここで働いてたの。なんで忘れてたんだろう」 二人はしばらくぽかんとしていたが、やがて徐々に記憶が元に戻ってきたようで、…

40.違和感世界

 朝日の差込みでは薄っすらと目を開ける。朝が来た。眠たい眼をこすりつつ上体を起こして、大きく伸びをした。瑠璃と真珠はまだ寝息を立てている。起こさないようにとベッドから降りて階段へ向かおうとすると、瑠璃と真珠が次々に目を覚ました。「おはよう二…

39.動き出した世界

 昼時を少し過ぎたぐらいにドミナから家へ戻り、昼食の準備に取り掛かった。瑠璃も真珠も手伝うといってきかなかったので昼食ごちそう大作戦はひそかに終わり、みんなで仲良くキッチンで昼食づくりをすることになった。瑠璃は不器用そうに見えて意外と器用で…